古民家再生と問題点

どうも荒川鯉師です。
志木市には江戸時代から続く蔵屋敷があり、くしくも取り壊しが進んでいると郷土史研究30(2012-02-28参照)で紹介いたしましたが、さらに市場通りの拡張工事の煽りも受け、取り壊しに拍車が掛っている状態です。やはり水上交通の栄華は人々の記憶から消え去り何時か幻想のモノとなってしまうのでしょう。
さてそんな市場通りですが、今更最近になって古民家再生の動きがありまして、最近ジワリジワリとその地位を確立している『レトロブーム』の煽りも何らかの影響を与えているのではないかと思われます。

上の写真が今回の物件になりますが、この建物は確か旧三上家だった様な…ムムム忘れてしまいました。引又町古地図を見ても三上家と記述されているので間違い無いはず…です。
さて本題ですが、造りは切妻瓦屋根とし木造2階建て白漆喰造りです。入口開口部はこの地方と時代背景を基に『田舎間』(五・八尺×二・九尺)の8連引戸と考えられます。1階正面開口部軒下の梁の太さと2階正面の細かい格子・屋根側部の『雲形卯建』が主な特徴となっています。

さて裏側ですが、かつてココから後方にかけて立派なと言う言葉ではもったいないぐらいの素晴しい建物がありましたが、近年取り壊され今では普通のマンションが建っております。さて建物自体としては、1階お勝手口付近に恐らく店蔵と母屋をつなぐ漆喰造りの大きな引戸があったと推測できますが、母屋が無くなった今では取り壊されお勝手口に変更されています。(裏手参照:郷土史研究292012-02-11)また2階へ通じる階段も後付の可能性があります。なぜなら店蔵は店をする『商業蔵』と言う機能の他に『防炎・耐火』の機能も有する為燃えやすい部材をわざわざ外部に設置するはずが無いので、その様な点からでも従来あったものではなく、今回の再生に伴って作られたものでしょう。
2点の写真を基に見てきますと、色々な点がわかってきます。まずは白漆喰の部分。よ〜く見ていただきますと、なにやら継ぎ目の様なモノが…そうなんです。実は、漆喰であると思われた部分は板で囲われていたのです。しかもその板の上からペンキで塗ったものですから他の部位にペンキが流れていて非常に残念な事になっています。せめて養生作業をした上で作業をするべきだと思います。また板の継ぎ目を見えないようにする何らかの方法(継ぎ目部を溶接する等)を講ずるべきだとも思いました。(下写真矢印部参照)

ちょっと店蔵に興味がある人はもうお分かりだと思いますが、そうです壁ですね。なぜ『真壁造』なんだと。そもそも真壁造とは、柱や梁を壁から出している工法で一般的な日本家屋にある工法です。ではなんでこれを問題提起したか。それは『蔵の効果』と相反するからです。前記にも記した様に蔵は『防炎・耐火』の機能を有しているからです。このことからわざわざ燃えやすい柱を出す事自体蔵の機能を殺す事になるのです。
以上の点を用いて『古民家再生と問題点』を提起させていただきました。しかしながら蔵の機能を残すのと新しい素材の融合は決して悪い事ではありません。そこに住んでいる人、使用している利用者は『モノを自由に使う権利』がありますから。「これは古い家だからサッシは使わないで下さい。」とか「景観に障るので電化製品は置かないで下さい。」と言う事は言えません。しかしうまく融合させ、来る人に悟られない工夫をする必要性もあるのも事実です。

                                                • -

註)本ブログは、古民家再生の一例を取り上げたものであり全てがそうであると言う確証を持っているものではありません。またこの建物は現在、利用されており、その利用者をブログを通して威力業務妨害をしているつもりはございません。しかし可能性ある事実を紹介したものであります。このブログに関して不快感・嫌悪感を抱いた場合はコメント欄を用いて削除依頼をお願いいたします。削除事由を考査した上で削除をさせて戴きます。
荒川鯉師