歴史的建造物の保護政策-2

どうも荒川鯉師です。
さて、昨日の続きである歴史的建造物の保護政策を紹介致しますが、昨日のを見ていない人は是非歴史的建造物の保護政策-1をご覧頂きたいと思います。
それでは歴史的建造物の保護政策-2と題しまして『国指定文化財登録文化財制度の違い』を紹介致します。それではどうぞ。
1996(平成8)年に文化財保護法の一部が改正され、歴史的建造物の登録制度(登録有形文化財、以下”有形文化財”と称す)を施行した。この法律よって保存対象が拡大し、国指定文化財建造物(以下”国定文化財”と称す)が約4,000件弱に対し、有形文化財の数は約6,000件を超える状況にある。有形文化財の場合、規制が国定文化財と比べて緩やかである事がこの背景にあるものと考えられる。(数値は平成21年資料より)
しかし、どんなに秀逸な建造物でも所有者の意思を無視する事は出来ない。所有者が国定文化財を拒否する理由として最も多いのが「自由に使えなくなる。」「自宅なのに他人に見せなくてはならない。(プライバシー観点の問題)」と言うのが大多数である。そこで所有者が建造物を自由に使える比較的軽い法律が登録有形文化財なのである。例えば当建造物にエアコンを設置したい場合、国定文化財では設置は難しいが有形文化財では設置方法を考え設置する事が出来る。(エアコンの室外機を木製の格子箱で覆う、冷媒管を建物内部に通すor建物と色を同一にする・・・etc)
有形文化財の問題点として、担当者の説明・知識不足が挙げられる。とある調査士の話では有形文化財の認定調査に行った際、所有者の方に「文化財に登録するのはやっぱり辞めて欲しい。」と言われ、その調査士が「どうしてですか?」と聞いたら「文化財に登録されれば、エアコンの設置はいけないし、窓ガラスも取り替えたいのにそれも出来なくなる。勝手に変えれば捕まってしまうから・・・」と言われた様で、その調査士は「有形文化財にあれば、そう言った事は自由に変更で来ますよ。」と説明した所「役所の人と話が違う!」と強い口調で言われた事があったそうです。
この様に、文化庁は「有形文化財であれば、厳密な許可制度を前提としない。」と提起しているが、文化庁以下の役所は国定文化財と同等に有形文化財を扱い、その登録制度を自ら阻害しているのが現在の実状である。

  • 国指定文化財・・・日本にとって歴史上、芸術上または学術上の価値が高いと認められ、厳選されたものが国民的財産として恒久保護される制度である。指定基準は「重要文化財」と「国宝」があり、そのうち国宝は世界的な見地から価値が高いと認められた重要文化財より厳選される。(昭和25年 文化財保護法制定)
  • 登録有形文化財・・・指定文化財で規定される厳密な許可制度を前提とせず、伝統的建造物等の所有者が行う自主的保護を促進し、その保護の糸口を確保する制度である。指定基準は築後50年経過し、国土の歴史的景観に寄与・造形の規範・再現が容易で無いと言うものに選定される。(平成8年 文化財保護法改定)