郷土史研究39

どうも荒川鯉師です。
最近サボっていた郷土史研究ですが、まぁまとまったと言いますか自論が詰まった内容と言いますか、これも郷土史研究の一つだと言う事で・・・
と言う訳で今回は埼玉県南部地方に伝わる生垣『高久根』を紹介致します。自論が殆どを占めますが、それではどうぞ。

高久根

高久根(たかぐね)とは、志木市を含む埼玉県南部地方に多く見られる生垣の事です。高さは低くて3mで高い生垣で5m近くあるものもあります。幅は太くて0.5〜1m程しかなく、生垣から派生したものである事が分かります。
私が調査した範囲(志木市朝霞市和光市新座市富士見市三芳町さいたま市上尾市鴻巣市)では、調査範囲の最北端である鴻巣市でこの高久根が確認されたので、調査範囲を広げる必要性があります。
使用される樹木はシラカシと言われる樹木で、漢字に表すと『白樫』と書く。漢字からも読み取れる様に、木偏に堅いと書く位堅い樹木なのが特徴であり、また粘りがあり強度も高く耐久性に優れている為、古くより建築資材・金鎚などの大工道具やスコップなどの柄に使用されたり、鉄道の枕木に使用されています。また防炎・除風性にも優れている事も知られています。
さて本題の高久根ですが、高久根があるのは郷土史研究11で紹介した『水塚』2011-05-17)の周囲や母屋の周囲にあるのが特徴です。また志木市地方の一部では高久根の事を『火伏せ』と言い、防火性を重視していた事が伺えます。
高久根の性能として、一つ目は上記に記した様に『防火性』である。母屋や水塚には数多くの家財道具や貴重品が集まる建物である為、防火に対して強くなくてはなりません。
二つ目に『除風性』が挙げられる。この地域は、冬になると荒川に沿って日本海側からの強い吹き颪の風が吹きます。その為、荒川流域に高久根が多くあり荒川から離れている地域では少なくなっている感じを受けました。
三つ目に『水防性』である。前項にて北側に高久根を配置すると言ったが、河川に近い住宅では、北側と河川に対して平行している高久根も存在している。その理由は洪水と関係がある。古くより志木市をはじめとする荒川流域は洪水に悩まされ生活をしてきた。そこで高久根を設置する事で、家屋にぶつかる水流を弱める働きが生まれる。これは同じ考えである屋敷林がそうである。家屋を押し流す程の力がある洪水流を極力弱め、家屋に対する被害を軽減させているのではないのだろうか。高久根に使用されている樫は、粘り・耐久性に優れている点でもこれが当てはまる。
四つ目に『使用性』も備えているのではないのだろうか。上記に記した様に建築資材にも使用される樫である為、洪水や火事で焼失・流失した家屋を建て直す為に樫をあらかじめ庭に植樹し、有事の際には使用すると言う事が考えられる。
高久根とは、自然事象や火事などの一大事にも対応できる優れものなんですよね。また、近年ではプライバシーの観点からこの高久根を配置している工場をたまに見かけますが、やはり高い生垣なので、そこは造園業者などの手を借りなくてはならず、コストの面でなかなか苦労してしまいます。

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この高久根を観たい方は志木駅東口の旧バス停(ロータリーの外側)に植えられている生垣がこの高久根となります。(右写真)確かに志木市に多く植えられていてシンボル的な存在ではあるのですが、立て看板や説明看板も何も立っていないので、他方から来た方ならまだしも地元の方でも知らない人が多く見られます。高久根の存在を残そうとする動きは評価できるが、高久根を広く周知しようとする動きは皆無ですので、今後広がってくれるとありがたいものです。私もこんなブログでしか周知出来ませんが、徐々に広がってくれるとありがたいものです。