安讃備紀行19

どうも荒川鯉師です。
自称「井戸好き」として行動している私ですが、旅行の先々で多くの「井戸」を観ています。特に「井戸ポンプ」はそのフォルムや機能性重視の良さ、そしてピストン運動などの物理法則を利用している点など、興味が尽きません。
ですが、今回紹介するのは尾道と言う土地柄が生んだ独特の井戸『二階井戸』を紹介致します。

二階井戸

尾道は「坂の街」と言われる程、急こう配と言える坂が多く点在しています。裏を返せば「平野部が少ない」と言う事で、人口増加に比例して坂に住居を構え、坂に住宅密集地が出来上がり現在に至っています。
現在の平野部の約7割は埋立地であり、井戸を掘ると海水が湧き出ました。そこで坂に住む住民は、1925年に水道が引かれるまでの間、天秤を背負った水売りの行商や、海水の出ない井戸を共同井戸とし、水を確保していました。
水は生活に無くてはならないものであり毎日、水を汲み入った桶を背負いながらあの坂道を上がるのはとても重労働でした。やがて坂道で暮らす人々は、坂下にある井戸に繋がる井戸を作ると言う考えになり、二階井戸が生まれました。
二階井戸は、本来の井戸を使用する一階部分と、更に滑車を伸ばして坂の中腹からでも水を汲む二階部分からなります。
尾道には多くの井戸が点在していましたが、二階井戸の様に坂に暮らす人々の知恵が生んだ民俗史的にも大変価値の高い存在である事が言えます。